「ぱふ」の落乱特集を読みました

ぱふ 2010年 05月号 [雑誌]

ぱふ 2010年 05月号 [雑誌]

特集は全3ページ、内容は尼子先生へのロングインタビュー。尼子先生の作品作りへのスタンスなどとても興味深く読みました。特に面白かったのが「子供が勘違いしそうな嘘は描かない」という部分。たとえば落乱にはギャグで自動販売機、自転車、腕時計といった明らかに時代錯誤な物が出てくることがあるけど、そういう子供が見ても明らかに嘘と分かるものは良い。でも、小判みたいな紛らわしい物は駄目。室町時代に小判は無かった訳ですが、それを知っている子どもが何人いるでしょうか?読んだ子どもは室町時代にも小判があったと思い込んでしまうかもしれません。*1そういう歴史的に嘘になる描写はしない*2という姿勢が、綿密な時代考証による深い知識が、作品のおもしろさを裏打ちしているんだろうなぁ。落乱に出てくる歴史雑学って本当におもしろいですもの。絵についても、火縄銃を構えるポーズを描くのに実際にやってみないと分からないからといって本当に火縄銃を買ってしまうという徹底ぶり。*3恐れ入ります・・・。そういうところが「子ども向け」ではないですよね。「万人向け」だと思います。
あと目からウロコだったのが、「ギャグなので落乱の世界にいじめはない」「辛気臭くなるしテンポも悪くなるから恋愛ものはなし」というあたり。ああ、落乱を読んでるとなんであんなに幸せな気分になるのかわかった。キャラが負の感情を一切出さないからだ。ドロドロの要素が一切無いからだ。原作ってアニメとは一味違ってブラックだしシビアだしソフトだけど下ネタ*4もあるのに、不思議と何の一点の曇りもない素晴らしくホンワカした気持ちになるんですよ、読んでると。読後は胸いっぱいに愛しさが残るんです(私の場合)。
こんな、始めから終わりまで満ち足りた笑みを浮かべたまま読める漫画は他にありません。正に心のオアシスです・・・。

*1:子どもどころか大人でも分からないのでは。

*2:一度、室町時代には無いサツマイモを出してしまったという失敗談があるんだそうです。こ、細かい…そんなの大人も知らない…!

*3:骨格標本といい、単なる資料ではなく殆ど先生の趣味みたい。そういうの良いなぁ。

*4:ウンコ。